2025 11 06

“URCYL”が世界のスタンダードになるとき

2025年10月某日、愛知県岡崎市にて識者ふたりの対談が行われました。齋藤峰明氏と小原淳氏*1。両氏はそれぞれ日本の里山文化や地域産業を核とする事業を展開されています。齋藤氏と小原氏の対話から「漆と木からできた自然素材URCYL」の可能性が浮かび上がりました。

この日、二人は森の中ではじめて出会いました。愛知県岡崎市にある雨山山


の山頂には、小原氏が2011年から取り組む森林再生のフィールドが広がっています。「この場所はとても気持ちがいいですね」。齋藤氏がそう呟いたのは多様な樹々が育つ自然林。植生調査から始まり、コナラやクヌギのどんぐりを採取し、地域の子どもたちと共に育てた「天使の森」です。多様な樹々が空に向かって伸びる森は、木漏れ日も葉のさざめく音も心地いい。「反対に」と齋藤氏は切り出します。「杉を植えた人工林は何か落ち着かなかった」。経済効率を目的に整備された森は、本来暮らすべき環境から離れてしまったように感じられたのです。古来、私たち日本人は漆や木材といった山の資源から生活に必要な道具を作り、暮らしてきました。やがて世界に産業革命が起こり、資本主義が台頭し、戦後は大量生産が本格化します。

「現在の効率化された文明は最も進化したものと思われていますが、この発展の仕方は本当にいいものなのか疑う必要があると思えるのです」。本来は使うべきではない素材も使っているのではないか。自然林と人工林の散策から、齋藤氏は進歩のあり方について思いを述べます。小原氏は森に入るようになり、今では使われなくなってしまった自然素材に出会いました。和紙の原材料である楮の繊維を使ったロープ、地産の木材、柿渋を組み合わせて開発したスツールは、モダンなデザインと天然素材の持つあたたかさやゆらぎが一体になっています。素材の選択一つでもっと豊かな生活ができる。スツールは小原氏のメッセージを宿していました。「ここはアイデアの湧く場所。自然界には有用なものがたくさんあり、それはこれからの世界に有用なものでもある。山から採れる素材の可能性を伝えたい」。自然林に思いを馳せる時の二人はとても幸せそうに見えます。

齋藤氏も小原氏も、かつて欧米が主導する資本主義の中でキャリアを歩まれてきました。その経験が、日本独自の精神性と豊かな自然環境の再認識につながっています。

例えば、日本の歴史や祭礼について。「千年を超えて祭りが受け継がれる国は日本しかない。海外の文化圏は侵略と破壊という歴史を繰り返してきたのですから。五代、六代、時には十代と受け継がれる家業も同じです」。ヨーロッパに精通する齋藤氏は、日本文化は世界でも類を見ない存在と言います。山と水に恵まれた日本の風土は、自然と共生する民族性と茶道や花道を生み出す精神性をもたらしました。近年の日本への興味関心の高まりは「自分たちが作り上げてきた文明と違うものがここにある」という無意識の現れ。神社や古道が、どういう世界に生きるのが幸せなのか考えさせる場所になっているのです。

「日本が持つ文化の深さに根ざした経済のかたちがあっても良いのでは」。齋藤氏と小原氏は声をそろえて言います。これだけの文化に恵まれた私たちには、世界に対してもう一つの経済と環境のバランスを提案する責任があります。その答えの一つがURCYL。「ELEMUSは漆という伝統工芸を世界に誇る新しい資源として提示しようとしていますね。海外からも評価される企業になれば、他の企業も日本は捨てたものじゃないと自然素材に再注目するでしょう」。欧米企業の真似ではなく、日本独自の価値観からの提案が新しいスタンダードを作る。

「そして、私たちは次世代にこのままの世界を受け渡してはいけないと考えています」。二人の想いと意志はURCYLの使命と重なります。URCYLが世界のスタンダードになる時、環境と経済が調和した未来が広がる。日本と世界、過去と未来、文化と産業、二人の対話は自然素材の内包する多様な価値を伝えてくれました。

*1齋藤峰明氏。エルメスフランス本社副社長を務めた経歴を持ち、現在は日本の里山文化やものづくりを振興するシーナリー・インターナショナル代表。


小原淳氏。建築コンサルタントとして活躍した後、特定非営利活動法人EARTH WORKER ENERGYを立ち上げ、理事長を務める。

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