日本において10,000年以上前から生活用品の塗料や接着剤として使用されてきたウルシノキの樹液である「漆」は、⽯油由来のプラスチックの一種と同じ化学構造を持っています。その「漆」と、間伐材や端材を利用した微細な木粉を掛け合わせ、人と地球がより有機的に共生することが可能な新素材“URCYL”を開発しました。
これまでウルシノキの人工発芽は、不可能とされてきましたが、わたしたちは世界で初めてその発芽に成功しました。今後は、自ら育てたウルシノキの苗を植樹・栽培し、そのウルシノキから採取した漆を利用することを目指しています。
採掘が可能になるまでに数億年もの時間を必要とする石油ではなく、漆が採取できるようになるまでわずか15年程度しかかからないウルシノキから生まれた新素材。
URCYLは、遠い未来ではなく、わたしたちが生きている時間軸のなかで循環させることができるサステナブルで無限の可能性を持った素材なのです。
ABOUT URCYL
ADVANTAGES OF URCYL
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01
STRUCTURE
プラスチックの一種と同じ化学構造式。
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02
CYCLE
発芽から15年程度という
短いサイクルで漆を採取可能。 -
03
FUNCTION
非常に高い耐久性でありながら、
さまざまなプロダクト開発に利用できる機能性。

OUR STATEMENT
URCYLを開発・製造するELEMUSは「100年後の世代が安心・安全・快適に生活するため、日本固有の技術や素材の可能性を見いだし、社会に貢献する」というビジョンのもと、さまざまな素材開発分野で事業展開する企業です。
効率化や生産性を重視し過ぎるあまり、数百年、数千年に渡って継承されてきた日本独自の技術や文化が数多く失われつつありますが、その中には、この時代においても卓越した技術が数多く存在しています。
そのような継承されていくべき技術にあらためて目を向け、本質的な価値を学び、それらを現代のテクノロジーと融合させることで、これからのサステナブルな未来を支えていく、リジェネラティブな素材作りを目指しています。

ABOUT URUSHI
日本において「漆」は、10,000年以上前から生活用品の塗料や接着剤として日常的に使われていた伝統的かつ身近な素材。
その化学構造式は石油由来のプラスチックの一種と同様で、熱を加えると固まる性質を利用することで、プラスチックのような高い耐久性を持ちながらさまざまなプロダクト開発に利用可能な「プラスチックの代替素材」の原材料としての大きな可能性を持っています。
そうした観点から、わたしたちは自らウルシノキの苗を育て、植林し、成長させたウルシノキから漆を採取しながら、新素材の開発に取り組んできました。さらに、ウルシノキは成長過程で二酸化炭素を吸収し、炭素を体内に固定化してくれます。大気中の二酸化炭素を炭素循環から隔離する方法としては、最も効率的な削減方法のひとつです。つまり、私たちが漆を利用すればするほど、大気中の二酸化炭素を削減できるポジティブなサイクルが完成するということなのです。




URUSHI TREES
実は、長い間「ウルシノキ」の種を人工的に発芽させることは不可能とされてきました。そうした中で、わたしたちは古文書から論文まで、漆にまつわるあらゆる過去の文献をリサーチし、大学との共同研究によって、2021年世界で初めてウルシノキを人工的に発芽させることに成功したのです。
現在は愛知県の中山間地で行政や地元住民、NPOと協働で栽培活動を行っています。漆を産み出す樹木の栽培から成形体を製造するスキームは、従来の石油を原料とするプラスチックに代わる世界最先端の環境素材技術と言える革新的な技術です。
ウルシノキは成長が比較的早く、発芽後15年程度で漆を採取できるようになります。一方、生物の死骸が化石化し石油として採掘できるようになるまでは約6000万年~2億年という無限の時間を費やさなければならず、その生産性と持続可能性の優位性は明確です。

STRUCTURE OF URCYL
新素材・URCYLは、ウルシノキを育て採取した漆に、わたしたちELEMUSのもうひとつのコア技術である「木材のパウダー化技術」を掛け合わせ、熱を加えることで完成。その革新性と独自性で、日本とEUにおいて特許を取得しています。
「ウルシノキを発芽させて、育てる」という世界初の発見と同様、トレーサビリティとクオリティを重視した独自の技術で、端材をはじめとする木材を微粉砕することで工業製品としての用途が広がり木材を活かしきる戦略として近年大きな注目を集めています。
豊かな森林から伐採されるさまざまな木材の無駄を最小限に抑えながら、成長の早いウルシノキの樹液「漆」と木材の掛け合わせから生み出されるURCYLは、あらゆる面において環境へのインパクトが低く、脱炭素やカーボンニュートラルの観点から見ても、全世界的なニーズに最も合致した革新的なソリューションと言えるのです。

THE PROCESS
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01
端材や間伐材などの木材をチップ化、基準値まで乾燥させます。広葉樹、針葉樹ともに原料として利用可能です。
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02
乾燥したチップを、特殊な木材粉砕装置で微粉砕加工を行います。URCYLの使用用途に応じて粉砕粒度を調整して、最適な木粉粒径を製造することが可能です。
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03
天然樹脂である漆は、70~80%が主成分であるウルシオールで構成されています。他には水やタンニン、ゴム、酵素などが含まれています。これらの構成要素は採取する時期や場所などによってばらつきがあるため、それらを見極め独自に調整します。ウルシオールに触れると漆瘡(うるしかぶれ)を起こすため、製造時に安全対策を講じています。
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04
URCYLの原料は、粉砕した木粉と漆以外の原料は一切使用していません。この製造技術は東京都立産業技術センターとの共同特許技術をベースに独自に開発しています。高分子および漆技術の第一人者である金沢工業大学小川俊夫名誉教授を技術顧問に迎え、さらに発展を続けています。
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05
熱硬化性樹脂であるウルシオールは加熱すると固まる特徴を持っています。URCYL粉体を金型に投入してプレス成形することで連続成形が可能になります。
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06
「URCYL」は、自社で、種子発芽・栽培したウルシノキから漆を採取し、木材の微粉砕加工を行い、独自の特許製法で原料を作り上げ、成形して製品を作るスキームです。現在、弊社が栽培しているウルシノキはまだ幼木ですが、近い将来、漆を自社で生産することを目指しています。それは日本で長年蓄積してきた技術や文化の結晶体であり、未来と世界に託す新しいものづくりの形です。
SUMMARY
わたしたちがURCYLの開発を通して目指しているのは、日本の伝統技術や考え方から学ぶ技術革新と、環境共生型素材の開発です。現在は日本の国立大学や国立研究機関などと連携し、ウルシノキの遺伝子レベルでの新種の開発や、交配による新しい特徴を持ったウルシノキの開発、ウルシノキの炭素固定化量の測定を通じたカーボンニュートラル社会への実装の検証を通じた山間地での新しい経済活動の支援、漆の化学的特性をさらに解明し、より高性能な製品に結びつける研究を進めながら、また、木粉を用いた新しい製品の設計や、製造プロセスの効率化を目指しています。こうした共同研究により、最新の科学技術を取り入れたさらに革新的なソリューションの提供を目指しています。